北上する春

– 春色の重なり –

北上する春 – 春色の重なり 

楽 水山に、二度目の春がやってきた。
羊蹄山の雪が解けだし、山懐の地表が水を吸い込んでいくと、ゆっくりと緑が広がってゆくのだ。
山頂の残雪と草花のコントラストがある季節は、少し冷たい風も心地よい。

3月から聞こえてきたソメイヨシノの桜前線は、縦長の日本列島に春を知らせる風物詩になっている。
5月に北海道でフィナーレを迎えている。

遅く桜が咲く北海道や、本州でも海抜が高い地域などでは、桜、桃、梅の花が、同時期に咲くこともある。

楽 水山の近くでも、春花のグラデーションが始まったようだ。

4月は未だ花材が少ない時期だが、食事処の所々でも花が迎えてくれた。
木の梁が解放的な「ゆきあい亭」の入り口やテーブルに。個室カウンター席の「入舟」や「海王」にもそれぞれの料理の世界観に合わせ目を楽しませてくれる。季節によって、蕨や土筆、菜の花、ハーブなど、食べられる植物で飾るのもこだわりのひとつだ。

客室の方に目を向けると、心和む優しい一輪挿しがさりげなく置かれていた。夏には地元のガーデナーが庭で丹精した植物を分けてもらって飾ることもあるそうだ。地元とのつながりは食材のみならず飾り花でも紡がれていて、館内の装飾に味わいを与えてくれていたのだった。

窓からみえる景色も、手元に飾られた季節の花も、自然に存在していることが、
すっと心に入って解放感で満たされていくのだと感じた。

ライター 吉田 弥生 / フォトグラファー 榊山 元

コンシェルジュ 
谷 香織 Kaori Tani

開業から四季を体験し、ニセコ周辺の豊かな花材で生けることが楽しみになっています。
近ごろは、蕗の薹やヤチブキを採り生けました。
地元の生花店に並ぶものと組合わせていくと華やかになっていきます。
ぜひ、館内の色彩をお愉しみください。

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    2月4日に立春を迎えました。
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    楽 水山に、二度目の春がやってきた。
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    山頂の残雪と草花のコントラストがある季節は、少し冷たい風も心地よい。

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    日本は温泉資源に恵まれ、古来から独特の湯治文化がある。
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  • 五感2021/09/24

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