冬支度

– 訪れる冬が北海道の食を彩る –

冬支度 – 訪れる冬が北海道の食を彩る –

羊蹄山やアンヌプリの頂に薄雪がつもり、北海道の長い冬の支度がはじまった。
薄暮の刻が早くなってきたことを感じるようになると、ニセコの大地は雪に覆われ深い眠りにつく。
しかし、眠っているかのような冬でも旬を迎える食材も豊富にある。
冬の献立の数々が織りなす料理の魅力を存分に愉しみたい。

「根室産鯖の燻製と余市産リンゴと茄子」

この日の前菜一皿目は「根室産鯖の燻製と余市産リンゴと茄子」。
冷たい海水にもまれ身にたっぷりと脂を蓄えた旬の鯖は1キロを超えるものを厳選。低温で燻製した鯖は鮮度を保った状態で燻香をまとっている。リンゴは11月に出まわる余市産の「昂林」を使っている。リンゴと茄子を鯖の身で包んだ棒鮨にも似た一品だ。
冷たい前菜は、泊谷料理長が創るこの季節ならではの一皿だ。
1キロを超える肉厚の鯖は脂乗りがよくしっとりとし、薫香が鯖の旨味を引き立たせる。茄子は鯖の脂と交わりトロリとして、リンゴが甘味と酸味を加えると、鯖とリンゴと茄子が重なりあう楽しさを感じられる。意外な組み合わせだが、3つの食材が見事にまとまり、美味しさが口の中に広がっていくと、次の皿への期待へと繋がっていく。

「岩内産朝イカとニセコ産紅はるか」

二皿目は温かい前菜を。「岩内産朝イカとニセコ産紅はるか」。
岩内漁港に水揚げされた真イカに細かく切れ目を入れ、身が反るくらいに表面を炙ることで、香り、甘味、食感のコントラストが生まれる。11月、ニセコで主流のサツマイモ「紅はるか」は糖度が高く加熱するとしっとりとした食感が特徴だ。それを丸ごと低温の油で1時間、ゆっくりと火を通し、皮が持つ香りやサツマイモの水分を閉じ込めイカのゴロ(内臓)とニセコ産の「贅沢トマト」を合わせ、酸味と奥深いコクを生み出した。それらを層状に重ね、ニセコ産の蕎麦の実とケール、オリーブオイルを添えて完成だ。
ソースの酸味と旨味が加わり、噛むほどにイカとサツマイモのねっとりとした身の甘みと炙った香ばしさが感じられる。蕎麦の実のカリカリ食感と香ばしさが料理を引き立たせているのだ。さらにケールの苦みを加えることで深みを生み出していく。甘み・酸味・旨味・香り・苦みと、味の層が次々と広がっていき、全体をオリーブオイルパウダーがまろやかにまとめている。驚きと感動が味わえる一皿だ。

ニセコは冬本番を迎え、世界中の人々を魅了するパウダースノーに包まれてゆく。
長い冬こそ、湯宿の滞在と食を愉しみたい。

洋の料理人
泊谷 智史 Tomofumi Tomariya

ニセコに移り住み二回目の冬を迎えました。この地で実際に春夏秋冬の食材に触れ、ニセコの農産物の特徴が少しずつですがわかってきました。ニセコの農産物と近海の旬の魚介類との相性などを考え、その日の食材の状態を見極めながら仕上げる醍醐味があります。

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  • 雪のある暮らし2022/01/18

    ここニセコに降る雪は「パウダースノー」と呼ばれ、雪に触れてみると水分を感じることもなく軽いのだ。溶けずにさらさらと手のひらからこぼれていく。
    ゆっくりとした時間が流れる里山の暮らしは豊かで、凛とした冬はなおのこと気持ち良い。少し長い滞在で、雪のある暮らしを愉しみたい。

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  • 湯治と料理2021/12/14

    日本は温泉資源に恵まれ、古来から独特の湯治文化がある。
    長い滞在を通し、温泉の効能で心身を整えていく保養・療養の原型とも言われているのだ。

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  • 冬支度2021/11/17

    ニセコの大地は雪に覆われ深い眠りにつく。しかし、眠っているかのような冬でも旬を迎える食材も豊富にある。冬の献立の数々が織りなす料理の魅力を存分に愉しみたい。

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  • 収穫2021/10/20

    北海道に秋が訪れた。晴れた日でも頬をなでる風は冷たく、日に日に夕暮れが早まってくる。しかし、秋は「実りの秋」というだけあって種類豊富な食材が収穫期を迎え、恵みをもたらしてくれる。

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  • 五感2021/09/24

    鉄板焼きで味わう秋の食材。
    「素材を見る」、「焼く音を聞く」、「香ばしさ」、「旨味」、「触れる」五感を刺激する料理。

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  • 発酵2021/08/04

    人類は古代より調味料として、食品を保存するための手段として「発酵」という技法を育んできた。日本最古の調味料といわれる酢をはじめ、日本の食に欠かせない醤油、味噌、みりんは発酵調味料だ。いずれも昔ながらの日本の味、日本人の原点の味だ。

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  • 文月2021/07/09

    ニセコは一気に緑が深くなってきた。
    北海道らしい食材があふれる季節の到来だ。

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  • 太始2020/12/01

    悠久の時の流れの中で、密やかに育まれてきたニセコの自然。その力によって生まれる折々の表情の変化の積み重ね、幾千幾万の繰り返しの果てに創り出され、今に至るニセコの風景。羊蹄山とアンヌプリの二山を望み、ニセコの大自然と融合した趣深い里山の情景に溶け込む「楽 水山」。

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  • 序章2020/02/03

    手つかずの雄大な自然と、そこに暮らす人々のささやかな営みが作り出した風景が融合する後志しりべし地区やニセコの風景。
    圧倒的な自然の力によって生み出される四季折々の表情は、見る人を魅了し感動をもたらす。

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